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トークイベント
「トショカンインの時間」

キダハミは2023.2.10に,大阪大学総合図書館にて,トークイベント「トショカンインの時間」を開催し,現職の大学図書館員6名が大学図書館の仕事の魅力についてトークしました。
現職員の仕事内容や志望動機,求める人材像や未来の大学図書館像等について語られた内容の一部をご紹介します。

 

■エグゼクティブの時間

【司会】
これまで30年ほど勤めてこられた管理職の皆さんに、参加者からの事前質問に答えてもらい、どんな人に来てほしいかを語っていただきます。
【鈴木】
皆さん。こんにちは。まず最初の質問は、「学部新卒で大学図書館員職員になる場合と、院卒や中途採用で大学図書館職員になる場合の求められるスキルの違いが気になります。」です。
【杉田】
求めるスキルに違いはないです。大体は入ってから何でも身につけることができるので、我々としては即戦力を求めていないです。入ってから見て聞いて、何でも身につけていってもらえれば良いかなと思っています。
【井上】
そのとおりですね。入った後に身に付くかどうかという、素質みたいなのは多分あると思うので、それをどうやって測るのかは難しいですが、いろいろなことに興味を持っているとか、ポジティブに私も何か取得したいという気持ちを持っている方を採用したいなと思いますね。
【鈴木】
次の質問です。「事務で採用されて図書館の業務をすることはあるのでしょうか?」
【井上】
図書の専門試験を受けずに図書館職員になるとことは基本的にはない。昔はあったかもしれないですが今はないです。
【杉田】
大学によっては、全職員を事務系職員として採用して、その中でこの年はこの人とこの人に図書館で勤務してもらおうというふうに図書館に配属されるケースがあるかもしれないです。そういうケースでは3年ほど経つと別の部署に行くことになるので、事務の試験区分で採用されて、安定的に長く図書館に勤めるというのは原則、ないと思った方が良いです。
【鈴木】
ですね。だから皆さん、ぜひ図書の試験区分で受験してください。

【鈴木】
次は「やりがいを感じることは何ですか?」という質問です。では私から。
さぁ、皆さん、「電子ジャーナル」って使ったことありますか?研究者である先生方は、紙、冊子の雑誌ではなく、国際的な研究論文をウェブ上のジャーナルで読むのですけど、大きい大学だと年間何億というお金がかかります。そして毎年毎年値上がりしているんですね。だいぶ前から世界的に、値上がりに耐えられず買えなくなる大学が出てきました。

先生方は電子ジャーナルの論文を読んで研究をして、その知見を広めるために新たな論文を書いて電子ジャーナルに投稿します。電子ジャーナルが買えなくなるというのは、論文が読めず研究に支障が出るだけじゃなくて、せっかく先生が書いた自分の論文を読んでもらえない、読む人が少なくなってしまうということで、大変困った状況なんです。
そこで、世界的に、研究者自身が著作権の範囲で自分で論文を無料公開していこうという大きな流れがありました。それを日本でも大学図書館がお手伝いしていこうという大きな転換があったんですね。今まで大学図書館では、本を買ったり整理して使ってくださいっていう仕事をしてきたので、先生方の研究の側面にタッチする全く新しい仕事が突然出てきて、先生方がどんな論文を書かれていて、どうやって無料公開したら良いのか、著作権でどこまで許されているのか、一つ一つ考えながら、取り組んだ。機関リポジトリというサイトを作って論文を公開していったのですが、あれはやりがいがありました。ちょうど杉田さんが係長で私が係員で北海道大学で一緒に楽しかったですね。

【杉田】
すごい昔の事。それまで誰もやったことのない仕事をどう組み立てて行くかというところで、そこが一番楽しかったですね。日本で前例がないので、外国に聞きに行ったりして、どうやっているのかを学んで来て、こっちでもやってみて、こっちではこうだったよということを返したりして。
今、鈴木さんが話した機関リポジトリという仕事を自分もしていて、それが一番印象に残っているやりがいがあった仕事です。流行りの言葉でオープンアクセスと言います。アクセスをオープンにする。オープンアクセスがここ15年ぐらい図書館業界の一つのテーマでしたが、最近はそこからもう少し進んで、オープンサイエンスという言葉が出てきています。オープンアクセスと言っていた頃は、大学の先生が書いた論文を大学のウェブサイトで公開しようという取り組みが中心でした。でも、それっていうのは研究が終わって新しい科学的な発見をして論文を書いて、研究の尻尾のところですね。ただそれだけじゃ遅い。学術の進展のスピードをもっと上げていきたいということで、研究の過程からもうオープンにしようという考えがあって、これをオープンサイエンスと言います。たとえば実験をしたらデータが出てきた。このデータを生まれたばかりで産地直送でオープンにしようということを図書館としても手伝おう、ということを我々やっています。

いろいろな学部の教員がいろいろな専門分野の研究をしています。その多様性に対応していく必要があります。図書館員にも理系から図書館員になった人というのが全国に、そこそこいるのですね。全国の理系出身の図書館員が集まって、こういうことをどうやっていこうかという検討をほとんど今年度からはじめているところです。今日お話ししている私たち3人は、そのプロジェクトでも一緒に今やっているんですけど、15年前のリポジトリの最初の頃と同じような、これから作り出していかなければいけない仕事ということでとても楽しくやっています。
【鈴木】
図書館で働くというと、カウンターで本を貸し借りするとか、レポートを書きたいんだけれどという相談にのるとか、そういう仕事をイメージされるかもしれないですけど、もっと幅広いことが大学図書館には求められていて、先生方が研究する大学の中で図書館としての役割というのもいろいろと変わってきている時代なので、是非いろいろな考え方や素養を持っている皆さんに入って来ていただいて、一緒に活動したいなあという風に思いますね。

【杉田】
大学図書館と公共図書館の違いは?という質問もありましたが、全く別物だと思ってもらった方が良いと思います。大学図書館というのは、本を読む人のための図書館ではなくて、本を書く人、論文を書く人、レポートを書く人、ものを書く人のための図書館なんです。そういう点で、来てくださる、使ってくださるお客さんの向いている方向が180°違うんですね。大学図書館今後を考えるうえでも、この点を常に意識してかかる必要があるかなと思います。

■ニューエイジの時間

【司会】

ニューエイジの時間ということで、若者三人に登場していただきたいと思います。まずは神戸大学附属図書館の電子情報グループ有馬さん、自然科学系図書館の佐藤さん、大阪大学附属図書館理工学図書館の市川さんの三人です。

【佐藤】

ニューエイジということで、最近採用された僕たちの人となりと、ここまでどんな感じできたかっていうのをお話しして、皆さんの参考にもなればと思います。
みんなそれぞれバックグラウンドが違っていますよね。
【有馬】

僕は、大学に司書課程があって、大学に図書館系の勉強会のサークルがあったので、そこに誘われて入って、大学図書館も含め現役の図書館の方と話したりとかしている中で、大学図書館職員という職があるのを知ったので、それで大学図書館に就職してという感じです。
司書課程のない大学卒業の市川さんは、どうやって大学図書館に就職されたのですか?
【市川】

私は昔から図書館に興味があって、図書館に就職するには、どうやったらいいかなって思っていて、通信で司書課程が取れるっていうのは知ってたので、勉強して司書資格を取って。でも特に図書館のことわからないまま卒業して、地方公務員に就職しました。全然図書と関係ない職場にいたんですけど、やっぱりどうしても図書館に勤めたいと思っていて。国立大学図書館職員統一試験で、母校の大学に人員募集があって、母校に帰るという意味も込めて受けたら、採用されて、今ここにいます。
私は文学部の出身なので、元から本に興味があったけど、佐藤さんは理系でしかも修士課程を卒業されていますよね、どんな感じでこの業界に入ったのですか?
【佐藤】

理系の職員もこの業界の中にいるんですけど、実は結構レアで志望する人自体が少なかったりします。よく聞かれるんです。なんで理系なのに図書館に来たんですか?と。
きっかけは、僕も司書課程の通信を大学院に入ってから受けていたんです。実験をしながらレポートを書いているのと並行して。図書館で働きたいっていうのがその時からあったわけではないけど、興味というか知っておきたいこととして。自分の進路を考える時になって、どういうところに就職しようかなと考えた時、理系とは関係のないところに就職する人は周りに結構いたけど、自分はちゃんと勉強したことの延長にある所に行きたいなと思って。研究に関わることをしたいなと思ったんですけど、研究の道については挫折してしまってました。
それで、研究の近くにいられる仕事って考えた時に、大学職員を思い浮かべて、その中でもさらに研究に近いところって、大学図書館がパッと像を結んで。興味本位で受けていた司書課程とか全部そこに繋がったわけなんです。

少しアクロバティックな経歴かなと思いますが、国立大学って構成員(教員と学生)の半分以上が理系の方なので、理系の職員っていうのも本当に求められてはいるんですね。それで、今のところ割合的に足りていない様子もあるので、理系分野に関わることを色々とやらせてもらえることも多くて良かったなあっていうふうに思ってますね。
【有馬】
普通の授業を受けたり、大学院と併行して司書課程を取るのは結構しんどかったんじゃないですか?
【市川】

学びたいことなので、そこまでしんどくないんですけど、隣に仲間がいないのが何よりしんどかったですね。通信講座は結構孤独なので。
【佐藤】

ですよね、国立大学法人の図書館では受験のために司書資格いらないですけど、あれば、勉強になるところはあると思うんです。
取れる環境にあったら取ってみるのもいいと思うけど、そういう環境でなかったらわざわざ通信講座まで受けなくてもいいと思います。図書館情報学に関するテキストは課程外でも手に入りますし、大学図書館に関わってくるのは、その司書課程の講座の一部だけなので。大学図書館で役に立ちそうな図書館情報学の一部をテキストをパラパラ見てもらうぐらいで十分理解は進んでいくと思いますし、それが試験対策にもつながると思う。

 


【市川】

国立大学の採用試験とかだと過去問がウェブ上でアップされているので、それ見ながら勉強したり大学図書館に図書館学の本が置いてあると思うので、それで借りて過去問を解いてみるとかでいいと私は思います。
有馬さんはずっと司書課程を学んでいたけど、仕事に着いてからギャップとか逆にありましたか?
【有馬】

司書課程も受けていて、図書館情報学の先生もいたし、図書館系のサークルに入っていたので、大学図書館員の勉強会行く機会もあり、実際に中の人の話を聞く機会があったので、ギャップがあったかというとそこまではない。あえて言うなら、司書課程の中などで、図書館ってみんなイメージしてるのはカウンターでの仕事だけど実はいろいろ力仕事があると言われたけど、多分あれは公共図書館の話で、大学図書館だとあんまり力仕事とかって言うほどなかった。お二人はどうですか?
【市川】

私はあまり情報がなかったですが、研究室の先輩に、大学図書館に勤めてらっしゃる方がいて、その方に相談したときに言われて、実際に働いてからも実感したことが「図書館で働くっていうと図書館が好きとか、本が好きって言われるんですけど、そうじゃなくて、それを提供する相手は人なので、人が好きじゃないとできないよ」ってことです。私は前職で窓口業務とかしてた時に、人に対応する力が結構ついてたので、それを大学図書館で働いていてもかなり活かせてるなって思うのは結構意外なところかなとは思います。

佐藤さん、いかがですか?
【佐藤】

ギャップはありました。大学図書館に限らず図書館っていうのは、外から目に付くのってカウンターに居る人だと思います。いつもそこに座っていて、暇そうだなと見えることもあるかもしれないですが、大学図書館入っていろいろ仕事し始めると、いい意味でも悪い意味でもすごく忙しい世界だなと思いました。悪い意味でもっていうのは、そんな楽はできないよってことです。いい意味で言うと、新しいことをどんどんやっていかなければいけない。挑戦できる。そういう世界であることが、とてもいいところだなと思いました。図書館が扱っているものは図書ってイメージがありますけど、それっていわゆる一つのメディアの形。そのメディアがもう今の時代に紙媒体だけじゃなくていろんな電子媒体になっていて、電子媒体も色んなフォーマットのものがあるし、テキスト以外のデータもある。それで、どんどん流通が変わっていく中で、それを収集して整理して提供していかなきゃいけないと、いろいろと勉強もしなければいけないし、横のつながりも作ったりしなければいけない。やることがかなりいっぱいあるんですが、それはとても挑戦的で面白い刺激のある世界だっていうのが、働く前と比べてかなりイメージの違うことだったなと思います。
 


【市川】

どんな得意分野のある、どんな人と、どんな仕事をしたいですか?
【有馬】

僕はどちらかというと、企画やイベントとか手伝いは得意だけれど、アイディア出せるタイプじゃないので、新しいことのアイデアをどんどん出してくれる人と仕事をしたいですかね。
真面目な仕事、たとえば裏方の目録取ったり雑誌契約したりっていう仕事できる人も多いんですけど、そういう人ばっかりだと、こういう機会が儲けられないので、まあそういう面白い刺激がある人は個人的には、一緒に仕事をしてると良い刺激にもなるのでいいかなと思ってますが、おふたりはどうですか?
【市川】

大きなこと、私もできないので、こういう企画とかできる人はすごく力を発揮できるんじゃないかなと思います。ただ、本当に大学図書館って、いろんな活躍の仕方があるので、「細かい作業得意だよ、大きな立案はできなくても細々したことが得意です」っていう人ももちろん、本の修理とかも必要になってくるので、力を発揮できます。なのでどんな人でも、結構私はウェルカムに働きに来てほしいなあと思ってます。
【有馬】

アイデアマンの佐藤さんは?
【佐藤】

本当にどんな人も来て欲しいって言うのは確かにあるなと思います。いろんな人が活躍できるフィールドがあって、図書館のことだけじゃなくて、大学のこともいろいろやったりするので。あえて今望んでいるのでいうと、2種類です。1つは、やっぱり理系が少ないので、理系の仲間が欲しいってことで、理系の人を増やしたいです。あともう1つは図書館に何かしら不満を持ってる人にぜひ来てほしい。
よく利用していて、なんでこうなってんだろうなあって不満を抱えてる人とか、(図書館を)利用していない人で足が遠のく不満を抱えている人がこの業界に来てくれたら、たぶんこの業界を変えられる、一歩進むんじゃないかなとも思うので。ぜひ不満を抱えて「大学図書館このやろう」と思っているような人が入ってきてくれたら面白いんじゃないかな?

【市川】

仕事のやりがいとか大変なことって何かありますか?
私がパッと思いつくのは、大学ならではだと思うんですけど、その大学の名前を図書館が背負ってるっていうのがこの2年で結構感じたことです。
図書館が決めてやったこととか、図書館に関することでも、大学がこうしたという話になるので。それはやりがいでもあるんですけど、逆に大変なことでもあるかなっていうふうに思います。
【有馬】

司書課程とってる学生が目指すのって、やっぱ公共図書館が多くて、そういう意味で大学図書館は意外と狙い目だと思ったのもあるんですけど、公共図書館はどちらかというと社会の底上げ。それはそれですごいやりがいのあることなんですが、僕はやっぱりアカデミックな最先端の研究とか、科学とか、直接かかわることはないかもしれないけど、そういうのを支えていくっていうのが、すごいやりがいだなと思ってますね。
【佐藤】

大きな話をしていいですか?人間が一生で知ることができることには限りがあると思うんですけど、それの上限っていうのが今人類がどこまでどういう発見ができているかだと思うんですよ。それで100年後とか、多分ここにいる人達は誰も生きてる人いないんじゃないかなと思うんですけど、自分が死んだ後もどんどんどんどん新しい発見があって、知らない世界がどんどん見えてくるはずなんですね。その先を(自分が)見えないもどかしさが、なんか昔からちょっとあって。それで研究っていうものを、ほんの少しでも手伝って前に進めることができたら、自分が最後死ぬところまでで人類が発見できることが一歩でもちょっと前に、それほどの推進力があるかわかんないですけど、いけるのではないかと。そういうロマンを持ってやりがいとしています。
【有馬】

このイベントの説明にも書いてある「巨人の肩に立つ」。その巨人の一部になりたいという感じですか?
【佐藤】

そうですね。巨人よ、もっと育て、もっと育てという感じです。
 

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